滋賀県立大学環境科学部 環境生態学科 Department of Ecosystem Studies

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STAFF 教員

植物分子生態学研究室

  • 荒木 希和子
  • 講師荒木 希和子ARAKI, Kiwako S.

    専門分野

    植物生態学,分子生態学

    キーワード

    生活史,クローナル植物,環境応答,エピジェネティクス,土壌環境

    研究室

    B3棟(環境生態学科棟)104室

    研究業績

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最終学歴

北海道大学大学院環境科学院生物圏科学専攻博士後期課程修了(2008年3月)

学位

博士(環境科学)(北海道大学)

職歴

  • 日本学術振興会特別研究員(京都大学生態学研究センター)(2008年4月~2009年3月)
  • 京都大学生態学研究センター機関研究員(2009年4月~2011年3月)
  • 日本学術振興会特別研究員(京都大学生態学研究センター)(2011年4月~2014年3月)
  • 立命館大学生命科学部助教(2014年4月~2017年3月)
  • 立命館大学生命科学部講師(2017年4月~2022年3月)
  • 滋賀県立大学環境科学部講師(2022年4月〜)

所属学会

  • 日本生態学会
  • 日本植物学会
  • 種生物学会
  • 日本植物生理学会
  • 日本進化学会
  • 日本エピジェネティクス研究会

受賞歴

  • 日本生態学会第51回大会ポスター賞優秀賞(2004年)
  • 日本生態学会第53回大会ポスター賞優秀賞(2006年)
  • 2007年度北海道大学大塚賞(2008年)
  • 第6回種生物学会片岡奨励賞(2012年)
  • 2019年度(第22回)エスペック環境研究奨励賞(2019年)
  • 立命館大学2019年度生命科学部学部長表彰(2020年)

著書の紹介


研究内容の
紹介

多年生植物の生活史戦略における適応的意義と進化的背景について研究しています。特に野外の変動環境下における植物の環境応答に関わる遺伝子機能の解析から,植物と環境の相互作用の解明を目指しています。そして,植物と生育環境の知見に基づいた,森林生態系の物質循環機能の評価と保全・修復にも取り組んでいます。

多年生植物の生態・進化に関する研究

植物には発芽後に何年もかかって開花し,さらに何十年も開花を繰り返す多年生植物があります。またその中には,栄養繁殖により新たな植物体を形成できるものがあり,クローナル植物とよばれます。この繁殖様式はクローン繁殖といわれます(個体の成長の一つとしてクローン成長ともいわれる)。クローン成長では多くの場合,匍匐枝,地下茎,塊茎など特異的な器官が形成されますが,これらは栄養やシグナルの伝達および資源貯蔵器官として機能することから,クローン成長は貧栄養や不均一な環境へも柔軟に応答する戦略として進化してきたと考えられています。新たに生産された植物体は親株と全く同一の遺伝的組成であり,その集団内にはクローン株が数多く存在し,個体も集団も長期間維持されることが知られています。よってクローナル植物を含めた多年生植物に関する研究により,植物の種多様性や環境への適応進化の理解を目指しています。

生活史戦略の多様性

植物は繁殖様式や成長過程において様々な生活史特性を持っています。生活史特性は集団のサイズ構造や遺伝的構造としても把握されますが,クローナル植物では,野外でクローンの広がりを認識できないため,遺伝マーカーなどを用いて集団の構造や動態を調べる必要があります。また固着性である植物では,送粉者や種子散布者などの共生生物との関係を把握することも重要です。さらにこれらの集団の構造と繁殖成功との関係についても調査を進めています。

環境応答・適応メカニズムの解明

生物は変動する周囲の環境に対して,安定的かつ柔軟に応答することで,その環境に適応しています。このような様々な環境に対する生物の応答メカニズムや進化的背景を理解するために,クローナル植物のクローン株や個体群を対象に,エピジェネティック修飾や遺伝子発現などゲノムレベルでの変化を調べています。エピジェネティック変異はDNA塩基配列の変化を伴わないゲノム上の変化であり,塩基やヒストンの化学修飾やクロマチン構造の変化により遺伝子発現を調節するものです。中でも,水環境への応答の長期的持続性ならびに地下部器官の土壌微生物への応答性に着目して研究を進めています。

生態系の物質循環機能の修復および生物種の保全

管理放棄された二次林では,有機物の蓄積により土壌微生物を介した物質循環が滞っていることが懸念されます。森林の植生ならびに土壌の微生物群集とその機能を把握し,適切な森林整備による物質循環機能の改善を試みています。さらに,生活史特性に根差した植物個体群およびその生育環境の維持から,種の多様性と生態系の保全へつなげる研究も展開していきたいと考えています。