滋賀県立大学環境科学部 環境生態学科 Department of Ecosystem Studies

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STAFF 教員

理論生態学研究室

  • 吉山 浩平
  • 准教授吉山 浩平YOSHIYAMA, Kohei

    専門分野

    理論生態学

    キーワード

    数理モデル,統計解析,生物群集,空間パターン形成

    研究室

    B3棟(環境生態学科棟)101室

    研究業績

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最終学歴

京都大学大学院理学研究科生物科学専攻博士後期課程修了(2002年3月)

学位

博士(理学)(京都大学)

職歴

  • 京都大学生態学研究センター研修員(2002年4月~2002年5月)
  • デラウェア大学海洋研究所研究員(2002年5月~2005年3月)
  • 京都大学生態学研究センター非常勤講師(2005年4月~2006年4月)
  • ミシガン州立大学ケロッグ生物学研究所研究員(2006年5月~2008年8月)
  • 東京大学大気海洋研究所研究員(2008年9月~2011年4月)
  • 岐阜大学流域圏科学研究センター助教(2011年5月~2015年9月)
  • 滋賀県立大学環境科学部助教(2015年10月~2016年9月)
  • 滋賀県立大学環境科学部准教授(2016年10月~)

所属学会

  • 日本陸水学会
  • 日本生態学会
  • 日本数理生物学会
  • Association for the Sciences of Limnology and Oceanography
  • Ecological Society of America

研究内容の
紹介

理論生態学研究室では,生態系で見られる様々な現象を数式(数理モデル)で表現し,そのメカニズムを明らかにすることを目的として研究を行います。対象とする現象は,生物の個体群の変動や空間分布,競争や捕食といった種間相互作用,生態系における物質循環,種の形質の進化・適応などです。対象とする生物は,主に植物プランクトンや細菌,生態系としては湖沼,海洋や河川を扱います。数理モデルの解析を主な手法とし,必要に応じて野外観察や実験を組み合わせて研究を進めます。これまでに行った主な研究は以下のとおりです。

湖沼や海洋における植物プランクトン鉛直分布パターンの形成メカニズム

湖沼・海洋において植物プランクトン量を鉛直的に観測すると,表面近くで極大を持つパターン(表層極大)と,深部で極大を持つパターン(深層極大)の2通りが見られます。本研究では,植物プランクトン鉛直分布のパターン形成を表す数理モデルを解くことで,これら2つのパターンがどちらも定常な状態であり,2つの間で不連続な遷移が起きることを示しました。

微生物細胞サイズの進化適応動態理論

水中に浮遊している単細胞微生物は,資源を細胞膜から取り込んで増殖します。細胞は小さいため,その周辺では相対的に粘性が高く,資源物質は非常にゆっくりとした「分子拡散」により供給されます。この分子拡散のみが有効な供給手段となる細胞周辺の層を「拡散境界層」と呼びます。この拡散境界層を通した資源供給過程を新たに組み込んだ数理モデルを解くことで,資源分子の大きさが大きいほど,小さい細胞が競争において有利となることを示しました。

植物プランクトンの機能的形質の進化に関する研究

植物プランクトンは多様な種により構成され,光合成や増殖に関わる性質,捕食回避などに関わる形態も様々です。これら種の存続・繁栄に関わる形質を「機能的形質」と呼びます。上記のように機能的形質は様々ですが,それらの多くは細胞の「大きさ」と強く関連しています。本研究では,植物プランクトンの代表的系統群である珪藻による栄養塩(窒素やリン)をめぐる競争と進化を表す数理モデルを解き,細胞の大きさの進化を調べました。その結果,栄養塩が間欠的に供給される場合,実際に見られる巨大な珪藻(直径2 mmほど)が進化することがわかりました。

光合成強光阻害下における植物プランクトン動態に関する理論

光とともに光合成量は増加する一方で,強すぎる光は光合成を阻害します(強光阻害)。本研究では,強光阻害が植物プランクトン量に与える効果を数理モデルで表し,その影響を解きました。その結果,光が強い場合には,植物プランクトン自身が増えることにより光を遮ることで強光阻害を緩和し個体群を維持できるか,強い光の影響を直接受け,強光阻害により絶滅してしまうかの2つの定常な状態が存在することを示しました。

その他,以下のような研究を行っています。

河口域における物質循環

地球温暖化が湖沼生態系に与える複合影響の評価

付着藻類群集のパターン形成メカニズム

自然現象に対して科学的説明を与えることが科学の目的の一つです。数理モデルとは,科学的説明そのものです。適切な数理モデルを組み立てて解析し,生命が関わる現象のメカニズムを解き明かすことが理論生態学の醍醐味であると考えています。